とある日の走行日記②

オウトピスタへの道を気にしながら走り続けること50キロ。時間は昼近くなっていた。メキシコ本土の西海岸に近いこの辺りは1月だというのに強い日差しのおかげで日中30℃近くになる。雨が少ない地域なのか?毎日殆ど快晴で日陰もなかなか無い。ゆえに、夏のよう。既にビールが恋しくなってしまうような渇きっぷりだ。
今日の目的の町まであと50キロ強というところまで来ていたが、このまま怖い思いをして厳しい道を50キロ強も走るのは考えただけでも嫌だった。
しばらくして、道の標識。オウトピスタのほうに向かって伸びる道。行き先の村の名前は地図で確認するとオウトピスタ付近の村。距離は13キロの表示。
遠回りになるので負担になるが、最悪テントもあるし、食料も水も多少あるので野宿すればいいやと腹をくくって側道へ・・・・。
道は全くの田舎道。完全未舗装の乾いているので泥ではないが、水を含めば路面が自在に変化するようなダート道で、車の轍やら何やらで荒れに荒れまくっており、進むたびに強烈な衝撃がタイヤを伝わって自転車全体に行き渡り荷物が揺れ、キャリアが軋むオフロード。
道は10件くらい田舎の家が並ぶ集落の中を抜け広場に出る。道はそこで突き当たる。
え!
突き当りには川が。マジですか?と呟きながら辺りを見回すと心細くも道は右に折れ続いていた。
地元住民の視線が突き刺さる。
こんな辺境の田舎道に見たことも無い外国人が見たことも無いような荷物満載の自転車に乗ってウロウロしてたら気にするなって方が無理だよなぁ~と思いながら、そそくさと走る。やがて道は広大な畑に沿って続く。
畑の横の、もはやこれは農道は3キロほど行って終わっていた。
え!!
正確には杭と有刺鉄線で囲われていた畑だったがその柵の一部が無くなっており、今度は畑内部へと続く・・・・。
もう農道ではなく畑の中の車の轍。
こんな道、地図に載せないだろ。と思いながら、ここで引き返す気にもなれず、道は繋がっているしオウトピスタのほうへ進んでいるという理由でさらにこの先人が切り開いた道?畑?ただの轍?を進む事に・・・・。
 道は何度も曲がりながらも、途中終わってしまうかのようにハラハラさせながらも続いていた。焦りから昼飯及び休憩返上で走っていたのと、強い日差しのおかげでヘロヘロ。しかも前半の転倒による怪我もそのままに走っていた。本当に行けるのか?その言葉が何度も胸の中でこだましていた。
しばらく行くと道は用水のような川に出た。川には橋が架かっており、人が釣りをしていた。
人だ!心の中でそう思いながらその橋を渡る。川の堤沿いに走る道から2人の男が歩いてくるのにも出会った。人がいるなら道があるってことだ!と少々気も昂ぶる。
橋を渡ると川堤が道になっていた。道沿いに何かの工場らしきものもあり、車も時折走ってくる。
しかし、道は戻る方向に伸びていった・・・・。
ちょっと待てよ・・・。このまま行ってはもと来た方向じゃないか。と思い辺りを見回すと道の伏線が。
またしてもとうもろこし畑の中を行く農道がオウトピスタ方面?荷向かって続いていた。
行くしかない!
幅2m程の水路に沿って伸びる農道をひたすらに走った。道中、車3台、オートバイ1台、農夫3人とすれ違いながら延々と続くメキシコのとうもろこし畑の中を揺れまくる自転車に跨って走り続けた。
どれくらい走っただろうか?道はやっとアスファルトで舗装された田舎道に交わった。
右へ行くか左へ行くか?
左は明らかに戻る方向。右は山の方へ向かっている。
真直ぐは農道。
僕は右を選択した。
しばらく行くと部落が。部落を過ぎると線路と交わった。その先は・・・・
未舗装ダートだった・・・・・。
その事実を眺めて立ち尽くす僕。
そんな僕に声をかけてきたのは線路脇の村の人だった。
もう、迷うわけにも行かないのでここは道を尋ねようと家の方へ。
全く片言で「エル カミーノ?」といって地図を指すとすぐに状況を把握してくれスペイン語でマシンガンのように話し出すおじさん2人。さっぱり分からない僕。しかし、とても親切そうな雰囲気だけは伝わってくる。そこへもう1人加わってきた人が英語が分かったので英語で疎通を図る。
オウトピスタへ行きたいという事が伝わってそれならこの道を12マイルくらい行けば出るよと教えてくれた。話しているとどんどん家の人が集まってくる。どうやら奥さんらしきひと、嫁らしき人、子供、ばあちゃん。子供、子供。
「水はそれだけしか持ってないの?」とペットボトルを取って水を足してくれたり、「メシ食べてくか?」といわれ、ご馳走にまでなってしまいました。
結局、オウトピスタまでトラックで乗せていってやるよといわれお言葉に甘え自転車を荷台に乗せ僕、英語の多少分かる兄ちゃん、おじさん、子供が同じく荷台に。運転席と助手席にそれぞれおじさん2人が搭乗しオウトピスタへ。
道中は全くの悪路で何度も曲がり荷台の脇にしっかりしがみついているような状態だった。
このとても親切な一家のおかげで無事オウトピスタに出る事が出来、心の底から本当にありがとうと「グラシアス!」と言って手を振って別れた。
この時点で走行(自転車だけで)70キロ。時間は3時ちょっと前。そして残り・・・・・。
56キロの標識が・・・・。
ひたすらオウトピスタを走る僕だった。
名前も聞かないないまま別れてしまったけれども、本当にあの一家には感謝、感謝です。見ず知らずの外国人にとても気さくにまた親切に昼食までご馳走になって。
早くスペイン語、覚えねば!

コメントを残す