限りある命

人間誰しも体のいずれかの場所に弱い部分を持っていると思う。
ある人は胃腸だったり、目が悪かったり、耳だったり、腰痛持ちだったり
糖尿の家系、がんの家系、だったりと。
僕の弱い部分、それは歯だ。
この旅にやってくる前も計画的に歯医者に通って悪いところは全部治療してもらった。
その前に、すでに僕の歯の左右上下の奥歯4本ずつ計16本はすべて神経を取ってしまって
銀色に輝くメタルの造形物で補修してある。その上、前歯の根元は虫歯にやられ
削ってプラスティックの詰め物で補修。
昔、通っていた歯科医師に言われた言葉
「君は虫歯のチャンピオンやなぁ~」
誰も、好きでなるわけじゃ無い。30過ぎまでかなり不摂生をした生活だったのでその負の遺産
として現在の歯の状態があるのだろうが・・・・。
僕は他の人より何をやるにしても時間のかかる人間らしい。
後が無いという状態まで行って、やっとそのものの存在の重要さに気づく。
歯もそうだった。
 それからは人に「やりすぎだ」と言われるほどに徹底した歯磨きと、食事にも気を使ってきた。
これは旅に出てからも変わらず、今に至る。
他の病気と違って、歯だけは回復することは無い。いわば持ち点100点からの減点方式。
その肉体が朽ちるまでどれだけ残せるかが快適な生活を送れるかどうかを左右する。
 ぎりぎりになって歯の大切さに気づいた不肖な自分、それから人が変わったように
手入れしてきたが、ここに来てトラブルが。
 結局現在かかっているメキシコシティの歯科にお世話になることになった。
その結果、ぼくには切ない話が待っていた。
とりあえず、現在の不具合は治るだろうが、要は人より歯の質が弱いらしい。そこに加えて補修箇所
が多く、弱い場所が多くなっている。要は、人より早く歯が無くなる可能性が大きいと言うこと。
分かっていた話だが、1年と数ヶ月で再びトラブルがでて歯科のお世話になった現実を見て
世の中には自分の力ではどうすることも出来ないことがあるんだと言うことを思い知った。
確かに人の肉体すべてが生まれた瞬間から死に向かって朽ちてゆくもの。
誰もが知っている周知の事実。
それを、まざまざと感じた今。
その瞬間瞬間をどう生きるか?
人にとって大切なのは今を如何に精一杯生きるかということじゃないだろうかと思った
僕はこの肉体を親から受け継いだ。不摂生をして体を苛めたのも自分の選択。
そしてその結果、今の自分が大切なものの存在に気づくことが出来た。
人間、当事者になるまで、自分がその味を味わうまで、その立場や心境を知ることは決して出来ない。
僕は、ひとつ同じ体験、同じ教訓を持つ人たちの気持ちが分かるようになった。。

コメントを残す