翌日、起きてみると停電もすっかり復旧しているようだった
朝、8時頃までに大方荷物をまとめておいて
階下に行って、宿の女性に書いた中国語文を見せた。
内容はこうだ
「自転車が壊れて走れないので、バスで玉树まで行きたい。
どこでバスが乗れるか教えて下さい」
見せると女性が上の階を指して待っていろとジェスチャー
している様。その後どこかへ携帯で電話している。
すると上から、昨日最初に対応してくれたおじさんが降りて来た
同じように書いた中国語文を見せると、
荷物はまとめてあるのか?
持ってこいと言っている様。
それで部屋から荷物を降ろして来たら、
彼の車に乗せろという。いわれるがまま、セダンタイプ
のトランクに鞄類計6個を押し込む。
当然セダンなのでチャリは乗らない
のでおじさん曰く、乗ってついてこいという
が、自走出来ない。正確に言うと出来る時と出来ない時が
ある。
ので引いてあるいてついて行く。
バス停まで案内してくれると思いきや、町中に停まっている
カーゴタイプの車の脇に居る男性のところで停まって何やら
話している。
それは、タクシーだった。おじさんが最初に20元かかるぞ
いいか?と聞いて来たので良いよと答えた。
値段から言って、バス停までだと思っていた。
すると、おじさんとタクシー運転手がもめだした。
すると、100元という話になった。
バス停まで100元でもなんでも、行かねばならない。
それに、荷物が多く重いし、自転車なんてかさばる
ものがあるので高くなっても仕方が無いと思っていた
し、100=1700円程度、それで次のステップへ
行けるなら高くも何ともない。
OKすると、おじさんのセダンから荷物をカーゴタクシー
へ載せる。載せたら後部座席は人が1人乗れるか乗れないかの
スペースしか残らなかった。
自分は助手席にのって運ちゃんを待つ。
運ちゃんはどこからとも無く段ボールを持って来て
自転車と車のシートや内装の間にしいて養生をしはじめた。
すぐに終わって、車は町の外れに向かって走り始める
どこに有るの?バス停?と思いながら、助手席で流れる
景色をみていたら、昨日、入ってくるときに通った町の入
り口までやって来た。道路脇に停まった車の側で男が2人
たってこちらを見ている。
タクシーがとまって、ドア越しに運ちゃんと男が会話する
「去玉树」(玉树行きだよ)
とそのとき初めて、バス停ではなく、これで
玉树まで行くのだと知った。
しかし、玉树まで200キロ弱ある。
それで、タクシーでチャリや荷物たくさん載せて
100元=1700円とは安い。
結局、その男も乗込む事になり、自転車を少し
どかせて自分が後部座席に座り、彼が助手席に
乗って車はスタートした。
流れる景色は、昨日、通った道を完全に逆回し、早送り
で進んで行く。なんとも、昨日おこった出来事が走馬灯のように
よみがえりながら進んで行った。
押して歩いた2時間の道のりや、昼食をとった河原、そして
故障を発見して再スタートした道端、さらに、雪が積もった
4800mの峠、キャンプした岩山の脇、崩れかけの仏塔、
3キロの真っ暗なトンネル。
車だと早い、2日間で通った道が数時間で
巻き戻しされる。なんともシュールだった。
雪が積もった景色も、なんだか奇麗ではなかった
やっぱり自分で漕いで走った時の景色の方が明らかに
奇麗だった。
そうこうしているうちに、3時間弱。道も奇麗だし交通量も
少ないのでおじさんは飛ばしまくって、11時頃、玉树の町に
着いていた。自分は先に下ろしてもらい、ネットで調べていた宿屋
をもう一度探すべく(最初に来た時見つけられなかった宿)その
近辺で下ろしてもらった。
荷物をチャリに括り付け、手押しで辺りを探す。
こないだもじっくり探して無かったのだが、
また、普通の安宿に泊まって公安が来でもしたら、
2日前に釘を刺されたばかりなので、不味いかと思って
外国人が泊まるようなホステルに泊まった方がいいかと
思ったので探した。
が、結局見つからず。情報が間違っているのかも。
諦めて、ちょっと高くてもガイドブックに載っている
宿に行こうと歩いていた。
そのとき、偶然の必然は向こうからやって来た。
何と!先日、ケサル王の巨像の前で会話した
チベット仏教のお坊さんが路地を曲がりながら
走る車の助手席から話しかけて来た
「Today, where are you going now ?」
と流暢な英語で話す彼がそのとき神、
いや仏様に見えた。
なんと言う偶然、なんと言う、タイミング。
この時間にここを通らなければ、
それ以前に、3日前に、ケサル王の像前で
彼と会って会話していなければ!
道の脇に停まってくれた車の助手席に座る
彼に事情を説明したら、
着いてこいと言ってバスののれる場所まで案内して
くれた。そこには数台のミニバンタイプの小型バスが
停まっていて行き先別に客を勧誘していた。
が、彼、曰く、今日は警察官が側にきてるから
バスが少ないと言う。どうやら普段は路地びずらりと
並ぶ程バスが来ているようだが、警官が規制するので
別の場所に居るのでは?と言う話だ。
が、結局、そうではなく、時間が12時過ぎと言う事で
バスがほとんど出払ってしまった後だったと言う事が
しばらくして分かった。
彼が言う、時間が遅い、バスがもうでてしまったので
明日朝なら、たくさんバスが来ていて乗れるだろうと。
しかし、ここから成都まで直接行くバスは無いから、
甘孜(gan zi)まで行って乗り換える必要があると言う話。
どちらにしても、ここ玉树で荷物を待つより成都に行った方が
何かと都合がいいし、宿の関係(公安が来た)もあるので
断然成都のホステルを送り先に指定して待つ方がいい。
そんな感じで話していたら、男が一人助けてくれたお坊さん
と話しはじめる。荷物満載の自転車の脇に立つ俺と坊さん
お坊さんは俺の旅の話を彼にし始め、彼は興味を持ったらしく
お坊さん通訳を通して色々話して来た。
どこで寝るのかとか?一人で旅してるのかとか?
そんな中でバスの話になって、この男曰く、
成都への直通バスがあるという話。郊外からでるので
車場は3キロ〜4キロ先の町の外れにあるらしく、
今日も2人の客をそこまで連れて行ったという話。
どうやら、彼はタクシーの運転手のようだ。
毎日出ているかは分からないが、あると言うのは確実という話
お坊さんは知らない、というが彼が言うならあるんだろう
と言う話だ。お坊さんが俺に言う、
そのバス乗り場まで行って聞いて来てみるか?
自分で行くなら行っても良いし、彼、(運ちゃん)
に載せて行ってもらうって言うなら30元で連れて行って
くれるって言ってるという。
もう当然、自分で言っても話せないから、乗りかかった
というか、必然が引き合わせたこの出会いに乗り切って
見る事にした。お願いして彼に載せて行ってもらう
というと、坊さんは相棒(車の同乗者)が車からクラクションで
急かしているのに気づいて、「気をつけてな」
と言って去って行った。
名前くらい聞いておけば良かった。
その後、運ちゃんのバンに自転車と荷物を積み込んで
バス乗り場へ連れて行ってもらう事に。
完全に中国語話せない俺に、色々、ジェスチャーで
辺りの名所や目印を説明してくれる、何とも温かそうな
この笑じわの似合うこの人はとても親切で、
バス乗り場へ着いてから、バス会社の人間に
色々聞いてくれて、バスが成都まで行くのか?
バスの出る時間。料金、など。自分が外国人で
話せない事も言ってくれ、お膳立ては完全にそろった
料金は500元(8500円)とのこと。
1350キロ移動の超長距離バスなので妥当な値段かと
思った。し、何よりも今はここを頼るしか無い。
前払いで払ってチケットを受け取る。バス会社の人
曰く、バスは明日正午12時に出るとの事。
ここの場所の名前も運ちゃんが促してくれて
バス会社の人が俺の手帳に書いてくれた。
そして、運ちゃんが荷物を預かってくれとバス会社
に言ってくれて、チャリ、そして貴重品を入れたフロントバッグ
だけを除いた鞄類を保管室に運び込む。
そして、再び運ちゃんのバンに乗って町まで送ってもらった。
帰りに、銀行に行かないと500元払って手持ちが無い
事をなんとか伝えたら銀行にも寄ってくれた。
親切に、何度も明日12時に出るからと念を押して
教えてくれる運ちゃん、電話番号を教えてくれようとして
どうも、明日も送って行ってくれそうな感じだったけれども
携帯電話を持ってないと言うと、そうか、だったら、
ああいうタクシーを捕まえて行くんだぞと対向車線を走って行く
メータータクシーを指差して俺の手帳に15元と書く彼。
どうやら相場が15元だと教えてくれているみたいだ。
分かったよとありがとうと言って
別れ際に30元を手渡した。
なんだかお金目当てでなく、それはどうでも良い
と言う感じの彼だったが受け取ってくれ別れた。
別れた後、とりあえず宿を取ってネット繋げて
方々にコンタクトを取りたかったので
ガイドブックに載っている見た目が超高級なホテル
のような「拉布寺宾馆」というホテル
入り口のくるくる回る回転式エントランスの上には
デカデカとこないだ公安が言っていた、渉外宾馆の看板
がかかっている。ここなら公安も文句(何も言ってこない)
言ってはこないだろう。と勇んで入って行った。
受付に女性が2人。
いつもなら、真っ先に「我想住宿」
と言うところだが、値段が気になって、壁にある料金表
のような物を見てみると全て3桁で一番安い金額も
300元代から?400元代から?
忘れてしまったが、とにかく、「高っけえ。」
と思った記憶だった。
受付の人に英語で泊まりたいというが
あ〜、外国人ねと言う感じで、英語が話せる
スタッフではない。
渉外宾馆なのに。。。。
ま、いつものように「住宿」(zhu su)と中国語で
言って意図を理解してもらい値段を聞いたら
一人部屋なら150元と300元の部屋があるとの事
150ならいつもより高いが、ま、許容範囲。
150の部屋で決めて泊まる事にした。
堂々とパスポート提示してチェックイン
お金を払ったら、もう一人のスタッフがスマートフォンの
翻訳アプリで日本語変換を使って
「パスポートは登録が終わったら部屋までとどけます。
あなたの部屋は2階にあります」と教えてくれた。
部屋は広かったけれど、150元相当の部屋だった。
古い部屋で掃除もそんなにしっかりと行き届いていない
ま、こんなもんかと思って、ネットに繋いで方々に連絡を
取る。が、しかし、肝心な充電器がバス会社の保管室に
置いて来た荷物の中にある。しかも昨日は停電で充電が
出来ず、残り10%を切っている。
なんと言う、必然。。。?
仕方が無いので最小限の連絡だけ取った
自転車のパーツはなんとか代替え(自分のモデルは
廃盤で同じ物はもう入手出来ない)品があって
修理が利くことを知り、自転車店に手配してもらうように
した。そんなこんなで一段落したのでご飯を食べに町へ
そう言えば今日は昼ご飯も食べていない。
町の食堂で回鍋肉を注文
品が出てくるまで、とっかえひっかえ物乞いが
店の中に入って来て1元をせがんで来た。
いったい、全員に1元ずつ払っていたら5人で5元
払う事になる。他の客は最初に入って来た人に1元
払っていたが、次も払うのかと思ってみていたら、
2人目以降は払っていなかった。
そうだろう。食堂へ入る旅に5人ぐらいの物乞いが
入ってくるので金がどんどん何も買っていないのに
無くなって行く。
その境遇も分かるが、アホ臭くて関わってられない
と俺は1元も払わなかった。
回鍋肉。食べ終わってお金を払う、
値段の書いてない店で、味もボリュームも文句無し
だったけれど28元(476円)と中国の飯屋としては
高かった。成都の通った飯屋ではご飯が4杯くらい食べられて
19元(323円)なのに。
やっぱり、田舎というか地方の物流にコストがかかったり
貧しい都市のほうが物価が高い傾向にあるんじゃ無いか
セオリーはラオスを思い出させた。
食事を済ませ他の買い物を済ませ
宿へ。ロビーでパスポートをもらおうとするが、
未だ何かやっている。もう、数時間経っているのに。
公安がまた難癖でも付けて来たのか?と思いもした
がその姿も何も無い。
部屋で夕飯時間まで過ごしてもパスポートは戻ってこず
夕飯に外出した7時頃、
ロビーを見やるがほかの客が来ていたので
戻りに回収しようと思い町へ。
町のパン屋でパンを買って宿へ帰る
受付に顔を出すと、パスポートを手に
先ほどの受付嬢が「ここを明日出てどこへ向かいますか?」
と訪ねて来た。
それで、成都へバスで行くとバスチケットを見せた。
「旅行で中国に来たのですか?」
と聞いてくるので
そうだと答えた。
すると、「ありがとうございます」
と言って、パスポートが戻って来た。
なんとも、渉外賓館のくせに受付が英語が話せない。
渉外賓館のくせに、パスポート登録に何時間もかかって
しかも、根掘り葉掘り聞いてくる。(公安の聞くような事を)
さすが中国。
突っ込みどころ満載。
パスポートを受け取って、部屋でパンを食べて過ごした
昨晩あまり眠れなかったので今晩は早く寝る事にして
9時頃にはベッドに入っていたら、
ドアをノックする音。
出てみると!!!???
公安!?では無く、
受付嬢だった。スマホを介して言う
パスポートの登録でしてなかったところがあった
パスポートを貸して欲しい。
明日の朝返すからと言う話。
さすが中国!
結局素直に渡して眠りについた。
ドタバタで写真を撮っている暇が無くほとんど
文章で申し訳ない。
2017年6月18日、自転車に依る旅走行0km。
タクシー移動およそ200km。
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