アーチーズ、パネくネェっすか!?

2日の朝、僕らは6時に起き朝食を済ませ身支度を整えた。キャンプ場から伸びるトレイルに足を踏み入れたのが8時ごろだった。

朝日を浴びて際立つ奇岩群のコントラストが迎えてくれた。気温は氷点下、たぶん-10度前後だったがそんな事は気にならない。さまよい続ける旅人。

しかし、自転車をこぐ筋力と歩く筋力は全く違うことを思い知らされる。足がダルダルに疲れていた。
まぁ、それも当然。山、いや、岩登りに近いトレイル。次のハイライト、デビルズガーデンに来る頃には10時を廻っていた。

Double “O” Arch

立て看板に注意書き。1人あたり1ガロンの水(およそ4リットル)を携行して行けと書いてあるじゃないですか。4リットルって大袈裟すぎませんか?なんて思って見ていたんですが、デビルズガーデンを一番奥まで行って戻ってきたときにはその意味が分かりました。夏場なら4リットルは軽く飲み干すだろうと・・・・・。

足はガクガク。腰はヘロヘロになって駐車場に戻り昼食タイム。

もう僕の中ではアーチーズ、お腹一杯になっていた。このデビルズガーデンが園内で一番奥にあり、昨日すっ飛ばしてきたもうひとつのゾーンが未だ残っていたが、走行6日目にしてこの日さすがにシャワーと暖かいベッドを求めて近くの町でモーテルに泊まろうと思っていた。折角のモーテル泊なので日の明るいうちからチェックインして買い物に行きのんびりビールでも片手にネットサーフしようと決め込んでいたので正直迷っていた。

すると岳君「僕は行きます!デリケートアーチ有名なんで」的発言。

うーむ。確かにここまで来て見なかったら話題に上ったときに話も出来ないし折角来たのにそんなに有名な見所を見ないのは・・・・。しかし、今度のトレイルもここと同じくらいの距離。足パンパン。腰ダルダル。うーむ。

迷った挙句、よし、乗った!!

一路、最後のハイライト、デリケートアーチへ。

そのアーチに向かうトレイルは平坦に続く砂利道から折り返し登ってゆく坂道へと続いていた。駐車場からその砂利道をトロトロと歩き始める。
 朝の氷点下と違って日中は冬だというのに日差しが強く汗ばむ陽気。天気は雲ひとつ無い快晴。

すれ違う観光客に「Hellow」、「Hi」、と声を掛ける。欧米人は老若男女を問わずフレンドリーで陽気だ。目が合えば軽くうなずいて「Hi」と声を掛けてくる。
 いいことは真似ようと思っているのでこちらも負けずにすれ違う人すれ違う人ごとに声を掛けまくる。

一つ目の坂を上るとその先にはひとつの巨大な岩盤のような岩山が現れその上のはるかかなたに人が米粒のように見える。

『マジですか?って言うか、これマジで登るんっすか!?』

無言になって、ひたすら疲れきった体に鞭を入れ登ってゆく。

しかし、途中で振り返るとそこにはすばらしい景色が広がっていた。

やっぱり凄い場所に来ているんだなぁ。っと感慨にふける。

そんなこんなで岩山を上りきり、少し緩やかな場所まで来るとひとつのアーチ?めいたものが右前方に見えた。
 しかし、パンフレットで見たものと形が違う。うーん。あれか?あれか?と思って登ってゆく。
結果、アーチでもなんでもなくえぐれた岩だった。

そして、再び、アーチが。

これもパンフと全く似ても似つかない。しかし今度はアーチ状をしている。
その、アーチは大の大人でも手を付いて上がっていかないと登れないような岩山であったが、登って行く人が居たので登らない手は無いと思いいざ!

登りきって。その大きな窓から見える情景は・・・・。

・・・・・・。

・・!・・・・!!

・・・・・!!!!!!!!

なんじゃこりゃああああああぁ!!!!!!!

が、こちら。

Delicate Arch

映像ではやはり臨場感は再現できません。空間、構造物、光、背景の景色、風、温度が全て伝わらないので。
そこにはそれら全てが一体となってその窓から見える景色は1枚の立体的な絵画のように広がっていた。

どこまでも青い空と、昼間の三日月。太陽の光に映えるアーチとその影。その向こうをかすめるように飛んでゆく飛行機雲。
この上なく贅沢な空間がここにあった。

諦めず、決め付けず、ここに来て良かった。そう、素直に思えた1日だった。